道東北の戦時遺産

釣山 史

2013年01月06日 05:51



道東北で戦時遺産の見直しが進む この秋、釧路と十勝の戦時遺産を探索した。道東北では、昨冬、稚内市の旧海軍幕別送信所の一部が積雪のために倒壊し、広尾町では野塚トーチカが海岸段丘を落下して話題となった。 この送信所は市の歴史的建造物であり、地元では通称・赤レンガ通信所と呼ばれて親しまれ、稚内市歴史・まち研究会と北海道建築士会宗谷支部が被害状況を調査し、現在、修築中である。 しかし、この種のものの多くは、ごく一部の歴史愛好家が趣味的活動としているのが実態であり、専門家や行政による保存事業は稀である。 最近、別海町に残る奉安殿が町の歴史文化遺産となったが、学芸員によると思想的アレルギーもあり、指定にはたいへん苦労したという。 大樹町では、歴史的価値があるとしてトーチカが整備保存され、広尾町は、トーチカを記念物に指定した。観光的ではあっても文化財として残された意義は大きい。また、帯広市などは、平和推進事業の一環として防空壕跡に標柱を設置した。 広尾町の豊似小学校にある二宮尊徳像は、戦時の金属供出のための陶製で、当時を物語る貴重な遺物であるが、著名な窯元で焼かれた備前焼は、本来の焼物としての価値も高い。 北海道文化財保護協会 釣山 史 ◆豊似小学校の二宮尊徳像 戦時供出後に再建された。製作は、岡山県備前市伊部の窯元・六姓木村家の総本家木村興楽園である。 ◆広尾町のトーチカ群 広尾町には、12基のトーチカが現存するという。同町は、戦時遺産を観光に活用しようと、新生トーチカを記念物に指定し、113 万円を投じて遊歩道を整備した。






















第333回   道東北の戦時遺産           

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