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2010年08月28日

蟹工船ブーム

『小説・蟹工船』はドキュメンタリーかノンフィクションか?

日本地理体系/S5年
 戦前・戦後の北洋漁業の一翼をなし、重要な輸出品として外貨獲得に大きく貢献した蟹缶詰は、その大分が洋上で加工されて、労働環境は極めて苛酷なものであり、それを描いた小林多喜二のプロレタリア小説『蟹工船』は余りに有名である。
 この頃の蟹工船は、制度上は漁船でもなく、工場でもないというもので規制が難しく、確かにリンチはあったし、衛生管理や栄養の不足、長時間の労働などから死亡、傷病者が多発したが、当時の日本社会には人権などという考えはなく、前時代的な使用人制度が残っている状況にあっては、この蟹工船が特に特異・奇異なものでも無く、道路や鉄道工事など、いわゆるタコと呼ばれる労働者が虐待とも云える労働搾取にあっていた。
 小説『蟹工船』は、多喜二の詳細な取材と調査によるもので、ノンフィクションかとも思われがちであるが、そのモデルとなった『博愛丸』は日露戦争の時の病院船だったことで広く知られており、たまたま、多喜二が住んでいた小樽へ来航したときに火災を発生させて大きな話題となっていた。そして悪玉の親分とされる人物は、この船上での蟹缶詰の製造ラインを完成させた蟹工船事業を象徴する人物であり、これらを背景にしながら、もちろん、博愛丸でも虐待はあったが、この小説の中に出てくる数多くの非人間的な事件の多くは、他の蟹工船であったことがモチーフとされ、事実にもとづきながらも、特異な事件を寄せ集めることで相乗し、誇張して作られた《あくまでプロレタリア作品》であることを認識して頂きたい。
 決して、この時代の強制的な労働や非人間的な取り扱いを肯定しているのでは無く、小説『蟹工船』を否定するものでも無く、ここ数年の重篤な経済状況によってあぶり出された社会欠陥から、若者たちの間で巻き起こった蟹工船ブームもあり、海外TVからも問い合わせがあったので、なかなか見つからないと云う当時の作業の様子の写真とともに、ここに啓上する。



工船蟹漁業の話/S3年

















漁業発達史蟹缶詰編/S19年




































































第201回 小説蟹工船      北海道の歴史,北海道の文化,北海道文化財保護協会,http://turiyamafumi.kitaguni.tv/
 


  

Posted by 釣山 史 at 10:13Comments(0)読書と北海道文学